色々な種類や味を楽しめ、子どもから大人まで手軽に食べられるパンは、今や欠かせない食品です。
特に自分の家族や子どもに食べさせるものには安全安心なものを選びたいものですが、「市販のパンには添加物がたくさん含まれている」と指摘されることもあり、不安を抱いている方もいるのではないでしょうか。
今回は「食品添加物とは何か」「パンに含まれる添加物について」「身体にどんな影響を与える可能性があるのか」などを詳しく見ていきます。
目次
パンはどんな材料で作られている?
パンの基本材料は小麦粉・酵母・塩・水の4つです。そしてパンの配合は、パンの種類によって大体の割合が決まっています。
たとえば代表的なパンの一つ・食パンの基本材料の配合は、強力粉100%・酵母2%・塩2%・水68〜72%程度。
4つの基本材料に加えて、副材料として砂糖・油脂・乳製品・卵などを入れることで味や風味が変わります。
さらにそれに加えて、食感や品質を向上させる・パンの劣化を防ぐなどの目的で食品添加物が使われます。
食品添加物とは
厚生労働省のページには、食品添加物は以下のように定義されています。
“食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものです。
厚生労働省は、食品添加物の安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで、使用を認めています。
また、使用が認められた食品添加物についても、国民一人当たりの摂取量を調査するなど、安全の確保に努めています。”厚生労働省 食品添加物について
これを読む限りでは、摂取量を守れば身体への影響はほぼないという認識をもつかもしれません。
ではなぜ私たちは、上記の説明を読んでも「食品添加物=身体に悪いもの」というイメージをぬぐい切れないのでしょうか?
市販のパンによく使われている食品添加物について、使用用途やメリット・デメリットなどを詳しく見ていきましょう。
なんで食品添加物を入れるの?
私たちが普段口にする市販のパンには、イーストフードや乳化剤などの食品添加物が多数使用されています。
「できるだけ摂取したくない」と考える方も少なくないであろう食品添加物ですが、どのようなメリットがあって使われているのでしょうか。
食品添加物を入れるメリット
長期保存ができる
保存料などの食品添加物がなかった昔は、食中毒で亡くなる人も多かったといいます。
しかし、保存料などの食品添加物ができたことで食品の腐敗や変質を長期間防げるようになったのです。
食品添加物がなければ、現在のような便利な食生活を維持することは難しいでしょう。
価格や味を安定させられる
食品添加物を使うことで、無添加のものより材料費を抑えられたり、味や品質を簡単に安定させられることが出来ます。
さらには短時間での発酵や、大量生産によるコスト削減も可能になります。
そのため味が安定した、価格も安い商品を出すことが出来るのです。
食品添加物を入れるデメリット
子どもの味覚を狂わせる可能性がある
人間の味覚は3歳までに基礎ができ、10歳にはできあがってしまうと言われています。
甘みや酸味など、食品添加物で人工的に作られた自然本来の味ではない濃い味に慣れてしまうと、正常な味覚が身に付かなくなる可能性も。
正常な味覚が持てないと、素材の味や薄味をおいしいと思えず、塩分や糖分の過剰摂取に繋がります。
将来的には糖尿病や高血圧などの生活習慣病になるリスクも上がる可能性も考えられます。
100%安全とは言い切れない
食品添加物として使用が認められているものは、基本的に厚生労働省が安全を認めたものです。
日本ではラットに対して発がん性・毒性の試験が行われ、異常が見られない量の1000分の1が使用量として認められているのです。
しかし、各添加物を継続して摂取し続けた場合や、添加物を組み合わせた場合などに関しては表記がないため、100%安全とは言い切れないのが実情です。
海外では禁止されている添加物も
厚生労働省が安全を認めているとはいえ、実際にはがんや脳腫瘍など病気の原因になる可能性が高いと指摘されているケースがあります。
日本で認められている添加物の数は世界でもトップクラスであり、他国では禁止されている場合が殆どです。添加物の使用に疑問を持つ方が多いのもうなずけます。
参考文献
より詳しく知りたい方は、こちらのページをご確認ください。
市販のパンによく含まれる添加物と身体への影響
普段パンを食べるときに、どんな食品添加物が入っているかを毎回チェックする人は少ないかもしれません。
実際に見てみると一目瞭然なのですが、スーパーやコンビニで売られている商品パッケージ裏を見てみると、食品添加物の名前がズラリと並んでいることがほとんど。
なじみがない名前も多いかと思いますが、摂取すると身体にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。
パンによく使われる食品添加物の一覧
パンに含まれる食品添加物は、食品表示法により表示することが義務付けられています。
そもそも何のために入っているのでしょうか。パンに含まれる代表的な食品添加物とその効果をみていきましょう。
イーストフード
イースト菌(パン酵母)を活動させるはたらきを持つ物質の総称。厚生労働省が認可する16品目の化学物質を総称して「イーストフード」と呼びます。
イーストフードはパン酵母(イースト)の栄養源です。塩化アンモニウムや硫酸カルシウムといった4~5種類の化学物質を使うことでパンの発酵を促し、製造期間を短縮させることができます。
その中の一つである塩化アンモニウムは、大量摂取すると吐き気や嘔吐を起こす危険性があります。
ファットスプレッド・マーガリン
植物油が主な原料です。油脂含有率が80%未満がファットスプレッド、80%以上がマーガリンと区別されています。
ファットスプレッドやマーガリンは、バターよりもコストが低いため、パン作りではバターの代用品として使われます。
植物油というと身体に悪くない印象もありますが、植物油にはトランス脂肪酸が含まれます。トランス脂肪酸は、欧米では食品への使用が禁止されています。
ショートニング
植物油から作られたラードの代用品。
液状の植物油を固形状にするため、水素添加という化学処理を行うときにトランス脂肪酸ができます。
このトランス脂肪酸は心臓疾患、癌などを引き起こす可能性があると言われており、世界的に規制が広がっている物質です。
農林水産省のページには以下のようにありますが、大量摂取すると身体に悪影響だという可能性の方が高いでしょう。
“トランス脂肪酸による健康への悪影響を示す研究の多くは、脂質をとる量が多く、その結果としてトランス脂肪酸をとる量が多い欧米人を対象としたものであり、脂質をとる量が少ない日本人の場合にも同じ影響があるのかどうかは明らかではありません。”
臭素酸カリウム
日本では、パン生地改良剤・小麦粉処理剤として使用が認められています。
臭素酸カリウムが小麦粉のタンパク質に効果的に作用し、パン生地や食感の品質が向上するとされています。
しかし、強力な酸化剤として1980年代に発がん性が確認されたこともあり、EUや中国など幾つかの国では食品への使用が禁止されている食品添加物です。
発がん性が指摘され、海外では禁止されているものの、日本ではパンを焼くときの熱で分解されることから表示義務がありません。
ソルビン酸K(カリウム)
ソルビン酸Kは細菌やカビの発生・増殖を抑えるはたらきがあるため、腐敗防止の目的で使われます。
単体の毒性・危険性はもちろん、他の食品添加物との複合摂取による発がん性が指摘されています。
乳化剤
食品衛生法では、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルといった5種類の化学物質を「乳化剤」として表記することができます。
水分と油脂を安定的に混ぜるために使用します。乳化剤には、パンに含まれるでんぷんに吸着して油脂を均一に分散させる力があるので、水と油といった本来混ざり合わないものを均一にするために使われます。
また、乳化剤にはパン生地の保水性を高めて、水分が蒸発することを防ぐ効果があります。またカビなどの発育を抑制する抗菌性の性質も持ち合わせているため、パンのやわらかさを保ちながら老化を防ぐことができます。
厚生労働省の安全検査では問題ないとされていますが、多量摂取により下痢を起こす可能性があります。
VC(ビタミンC)
パンに使用されるビタミンCは「アスコルビン酸」のことです。酸化防止のためや生地の品質を改良し柔らかさを出すために用いられます。
ビタミンCは小麦粉のグルテンに反応し、パン生地の弾性を高める効果があります。身体への影響は特にないとされています。
メタリン酸ナトリウム
主に品質改良剤として使用。
日本の食品衛生法にはメタリン酸ナトリウムの基準はありませんが、骨形成に影響を及ぼす可能性があります。
輸入小麦
輸入小麦は、長期輸送のためポストハーベスト農薬が使用されている可能性があります。
ポストハーベスト農薬は収穫後の作物に散布されるもので、品質保持の目的で使用されますが農作物に残存する量も多いと考えられています。現在、海外からの輸入小麦のポストハーベストの農薬残留濃度の許容量は、国産小麦の140倍です。コンビニやスーパーで販売されているパンのほとんどがこの輸入小麦を使用しています。
このポストハーベスト農薬には、発がん性などが指摘されています。
【参考記事】
>ポストハーベスト農薬とは?国産小麦100%の安全性と無添加パンの魅力
リン酸塩
品質改良剤、結着剤として使用。
リン酸塩からのリンの過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害するなどの影響があるとされています。
無添加パンは販売価格が高いのか
「いつも無添加のパンを買えればいいけど、無添加のは高いし…」、そう思ったことがある方は少なくないはず。
一般のパンは、添加物を使用することで賞味期限を延ばすことができ、価格や品質の安定や遠方への流通が可能にすることで価格を抑えています。
無添加のパンは、食品添加物が使われていない分材料費や手間がかかることから、一般のパンに比べやや高い値段で販売されている傾向にあります。
また、無添加ブランドとして「身体に良い=価値がある=値段が高くても売れる」という付加価値があることも考えられます。
健康リスクとの比較
数年先、数十年先の健康リスクを考えてみるのはいかがでしょうか。
万一病気になってしまえば、無添加パンとの価格差はあっという間に埋まります。がんなどの大病だけでなく、アトピー性皮膚炎や喘息などのリスクもあるのです。
安全性が認められているとはいえ、やはり子どもや家族にはできるだけ安全安心な無添加パンを食べさせたい。
そんな視点で考えてみると、多少の価格差には目をつぶれるかもしれません。
無添加パンは手作りできる
もしお金をかけたくないというのであれば、自分で無添加パンを造ってみるのはどうでしょうか?
例えば「ホームベーカリー」があれば、材料を入れるだけで簡単にパンが作れます。
材料は天然酵母、強力粉、砂糖、塩、水。これに好きなドライフルーツや果物を加えるなど、アレンジも簡単にできます。
長い目で考えれば、材料費も市販の無添加パンを買うより安くつくかもしれません。
今は簡単にできるパンの材料セットなども売っているので、自分好みの粉や天然酵母を見つけるのもよいですね。
夜のうちにホームベーカリーに材料を入れてタイマーをセットすれば、焼きたてのパンを朝から食べられるのでおすすめです。
まとめ
添加物が悪いとは一概には言えません。しかし、身体や味覚の基礎ができる大事な時期に子どもが口にするものにはなるべく注意したいですよね。
最近は市販のパンにも添加物の少ないものが商品として並んでいます。
完全無添加までは難しくても、気になるものが入っていないかをチェックして、納得したものを買うことは大切ですね。
ご自身やご家族が安心して食べられるものを、この記事を参考にぜひ見つけていってください。
国産小麦100%、無添加生地の安全安心な焼きたてパンを提供して38年以上
参考記事
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>パン屋を開業・独立したい人必見!絶対に知っておきたい情報まとめ
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