買ってきてすぐに食べられる、おかずがなくてもパンだけで満足できる、いろいろな種類があるから飽きない。様々な理由からパンを好んで食べる方も多いかと思います。
しかしその一方で、パンだけだとお腹がすきやすい、栄養が偏りやすいなどといったデメリットも気になるものです。
この記事では、私たちが日頃よく食べるパンに含まれる栄養素やパン食の方が不足しがちな栄養素、健康的なパン食生活を送るヒントを詳しく解説します。
どうしてパンが選ばれるのか?
最近では「朝はパン派」という方も多いのはないでしょうか。特に若い方ほど、朝ごはんとしてパンを選択することが多い傾向にあります。
また、フランスベーカリー、食パン専門店など、人々のニーズに合わせて新しいパン屋さんも続々と生まれています。
なぜ現代ではパンが好まれているのか、その理由を紐解いていきましょう。
日本人の主食は米からパンに移行
以前までは、日本人の主食といえばまず「ご飯」が挙げられてきました。しかし最近では、主食がパンという方も増えており、パンが徐々に地位を上げてきています。
総務省「家計調査」によると、平成20年(2008年)以降、パンの支出額がお米の支出額を上回っています。
また、全世帯でのパンの購入数は、2000年に比べ2014年はおおよそ1.15倍に増加し、2035年には1.33倍に増加すると推測されています。
これらのデータからも、人々の主食がご飯からパンに移行していることがわかります。
この背景には「食の欧米化」が大きく関係しています。
日本人の食習慣が大きく変化したターニングポイントは戦後です。第二次世界大戦後、日本は食料不足に陥り、アメリカの助けを得て生活を保っていました。
そこで大きく普及したのが、パンの材料である小麦です。それ以来、学校給食でもパンが出されるなど、小麦の存在は日本人にとってぐっと身近なものとなりました。
さらに、戦後の復興により日本でも貿易が活発になり、お肉や乳製品の輸入が進んだことが食事の西洋化に拍車をかけます。
それまでの主菜は魚だった日本人ですが、だんだんとお肉を選択する機会も増加。すると、おかずの味に合わせるように、主食にパンなどの小麦料理を選択する機会も増えていったのです。
パン食とは?パンの魅力はここに
パン食とは、「パンを主食とした食事」のことを指します。
一日に一食はパンを食べるという方はとても多く、中にはパンが大好きで一日3食パンを食べるというパン食生活を送る人も。
このようにパンが好まれ、選ばれる理由は主に3つあります。
調理不要ですぐに食べられる
パンは難しい調理を必要とせず、購入しておけばすぐに食べることが可能です。
お米は洗って浸水したあとに炊飯をするといった作業が必要になり、時間がかかります。また、ご飯に合うようなおかずを何品も作ろうとなるとさらに手間がかかります。
その点、パンは焼かずに、もしくは軽くトーストするだけで食べられるうえ、調理パンであればおかずの準備も少なく、調理時間や手間を必要としません。
簡単にすぐ食べられるというポイントが、特に時間のない朝食にパンが選ばれる大きな理由です。
この背景には「共働き世帯の増加」が大きい要因だと考えられます。
消化に優しい
パンはお米に比べると消化吸収が早い食べ物です。
成長期のお子様には物足りない可能性がありますが、朝はパンとコーヒーで軽く済ませたい方、胃の負担をかけたくない高齢者の方には嬉しいものです。
高齢者の方は「ご飯派」の人が多い印象がありますが、そんなことはありません。散歩の途中で焼きたてパンを買ったり、お昼は簡単に済ませたいと買いに来られる方が非常に多いです。
いろいろな味のパンを楽しめる
パンはとにかく種類が豊富。フランスパンからドイツパン、日本のパン、これらは同じパンとはいえ、味や食感はさまざまです。
お店に行けば、お惣菜パンや菓子パンなどたくさんの種類のものが並び、しょっぱいものから甘いものまで選び放題です。
新しい商品も次から次へと生まれ、そのバリエーションの幅広さはいまやおにぎり以上。こうした種類の多さや味の幅広さがパンの魅力であり、たくさんの人に愛されるポイントなのです。
特に女性は新しいパン、見た目がかわいいパン、美味しそうなパンには目がありません。
パン食のメリット・デメリット
パン食のメリット
・時間に余裕のないときでもさっと食べられる
・軽い食感なので小腹がすいたときの軽食にもいい
・比較的日持ちする
・個包装のものが多く持ち運びも容易
パン食のデメリット
・市販のパンは添加物が多く含まれている
・柔らかいので咀嚼回数が低下する
・パンそのものに脂質が多く含まれる
・カロリーが高くなりやすい
・特定の栄養素が不足してしまう
ご飯はお米を水で炊くだけなので、添加物を摂取することはほぼありません。その一方で、自宅で作った自家製パンは別として、市販のパンの多くには保存料などさまざまな添加物が使用されています。
添加物は日持ちをよくするためやパンの外観や香りなど品質を高めるために加えられています。
通常、適切な量を摂取するのであれば身体に害を与えることはほぼありません。
しかし添加物も100%安全だと証明されているわけではないですし、添加物入りのパンを毎日食べれば添加物が蓄積していって身体に何らかの影響を与える可能性もあります。
参考:パンに含まれる添加物と安全性まとめ|お店で買えるおすすめ無添加パン
また、お米はよく噛んで食べるのに対し、パンは柔らかい食感のものが多く、どうしても噛む回数が減ってしまいます。
咀嚼回数が減ることは、消化能力の低下やむし歯・歯周病の原因、肥満のリスクにも繋がります。
日ごろ食べているパンの栄養素
種類が豊富なパンですが、今回は皆さんがよく食べていると思われるパンを並べ、それぞれの栄養素を詳しく見ていきます。
また、栄養学の観点から、パン食の人に足りない栄養素をお伝えします。
いろいろなパンの栄養素を比較
※香川明夫『七訂食品成分表2017』(女子栄養大学出版部、2017年)参照
食パン
【エネルギー264kcal/タンパク質9.3g/脂質4.4g/炭水化物46.7g/食物繊維2.3g/カルシウム29mg/ビタミンC(0)mg/食塩相当量1.3g】
食パンは、柔らかい食感やボリューム、風味を与えるために、生地にバターが練りこまれています。そのため、脂質の含有量が少々高めになります。
また、意外に知られていませんが食パンには塩分がかなり含まれています。
(塩は丈夫なグルテン形成や酵母の働き調整に関わるため、パン作りには欠かせない材料です)
食パンを主食に食事をする際は、おかずの脂質量や塩分量に気を付け、副菜で食物繊維やカルシウム、ビタミンCを補えるようにすることが重要です。
フランスパン
【エネルギー279kcal/タンパク質9.4g/脂質1.3g/炭水化物57.5g/食物繊維2.7g/カルシウム16mg/ビタミンC(0)mg/食塩相当量1.6g】
フランスパンの材料は非常にシンプルであり、パン作りに必要最小限な小麦・イースト・食塩・水のみで作られています。
生地にバターを使わないので、脂質の含有量はパンの中では比較的少なく、脱脂粉乳なども使わないためカルシウム含有量も少ないです。
グルテンの形成を抑制させるため、フランスパンには過発酵抑制作用のある食塩が多めに使われます。そのため、塩分は多めになります。
フランスパンを主食に食事をする際は、おかずの塩分量に気を付け、副菜で食物繊維やカルシウム、ビタミンCを補えるようにすることが重要です。
ライ麦パン
【エネルギー264kcal/タンパク質8.4g/脂質2.2g/炭水化物52.7g/食物繊維5.6g/カルシウム16mg/ビタミンC(0)mg/食塩相当量1.2g】
ライ麦パンは材料にライ麦粉を用い、バターなどの油脂を使わないのが特徴的なハードパンです。
ライ麦粉とはライ麦を粉末にしたものであり、小麦粉よりも食物繊維やビタミンB群が豊富に含まれています。
他のパンに比べ食物繊維が多く含まれているので、1日3食ライ麦パンを主食とした場合、それだけで1日に必要な食物繊維量を摂取することも可能です。
油脂を使っていないので、脂質含有量は少なめのパンになります。栄養価は高いほうですが、カルシウムやビタミンCの含有量は少ないといえます。
ライ麦パンを主食として食事をする際は、他の食材からカルシウムやビタミンを補う必要があります。
クロワッサン
【エネルギー448kcal/タンパク質7.9g/脂質26.8g/炭水化物43.9g/食物繊維1.8g/カルシウム21mg/ビタミンC(0)mg/食塩相当量1.2g】
サクサクな食感が特徴のクロワッサンに欠かせないのがバターです。
クロワッサンは小麦粉量に対し50%近くのバターを必要とするため、パンの中でも脂質含有量が非常に高いパンです。そのため、100g当たりのエネルギー量(カロリー)も高いです。
脂質が多く、タンパク質や糖質の少ないクロワッサンは、他のおかずとの栄養バランスをとるのが困難なため、毎日の主食には向かないと考えられます。
ロールパン
【エネルギー316kcal/タンパク質10.1g/脂質9.0g/炭水化物48.6g/食物繊維2.0g/カルシウム44mg/ビタミンC(0)mg/食塩相当量1.2g】
ロールパンはバターロールやテーブルロールとも呼ばれます。
ふわふわでミルキーなロールパンを造る際に必要になってくるのが、バターやマーガリンなどの油脂とスキムミルク(脱脂粉乳)になります。
ふわふわな生地を造るために油脂をたくさん使うため、脂質含有量は高くなります。また、スキムミルクなども用いるのでカルシウム含有量は比較的高くなります。
ロールパンを主食とした食事の際は、食物繊維やカルシウム、ビタミンCを補えるようなおかずを一緒に食べることが大切です。
パンとお米の栄養素を比較
ここまでパンの種類別による栄養素の比較をしてきました。
次は日本の主食トップを競い合っている、パンとお米の栄養素を各1食に食べる量を考慮して比較してみましょう。
食パン6枚切り2枚(120g) | ご飯一杯(200g) | |
エネルギー | 317kcal | 336kcal |
タンパク質 | 11.2g | 5.0g |
脂質 | 5.3g | 0.6g |
炭水化物 | 56.0g | 74.2g |
食物繊維 | 2.8g | 0.6g |
カルシウム | 35mg | 6mg |
ビタミンC | (0)mg | (0)mg |
食塩相当量 | 1.6g | 0g |
ご飯とパンの1食分の栄養素を比較すると、エネルギー(カロリー)はご飯のほうが高いですが、脂質はパンのほうが8倍以上高いことがわかります。
パン食では脂肪分を摂りやすくなりがちなので、おかず選びは脂肪を少なめにしたほうがよいでしょう。
食塩相当量は、ご飯が0なのに対し、パンは1食に1.6gも含まれています。パンに合わせるおかずによっては塩分過多になってしまうこともあるので、注意が必要です。
ご飯と比較すると、パンは食物繊維やカルシウムが多め。とはいえ、3食分の食パンだけでは、1日に必要な食物繊維やカルシウムを摂るのには不十分です。
ビタミンCはご飯、パンともにmgであると推定されているので、おかずを工夫して補う必要があります。
パン食生活で不足しがちな栄養素は〇〇で補える!
パン食生活では、食物繊維やカルシウム、ビタミンCが不足しがちになります。ここでは、これらの栄養素を上手に補うコツをお話しします。
食物繊維
食物繊維は、お通じを整えたり、血糖値のコントロールを整えたりする作用があります。さまざまな生理作用が認められ、第6の栄養素ともいわれるほど重要な栄養素です。
目標摂取量は成人男性で20g/日以上、女性18g/日以上とされています。
食物繊維は、豆類や野菜類、キノコ類、藻類に多く含まれます。
豆類では煮豆やおからに多く含まれます。スープに煮大豆をプラスしたり、ポテトサラダにおからを混ぜてパンに挟んで食べるといいでしょう。
野菜類では、ゴボウやアスパラガス、オクラ、ブロッコリーに多く含まれています。
キノコを茹でて、ワカメなど海藻と好みのドレッシングで合わせれば簡単食物繊維サラダの完成です。
カルシウム
カルシウムは丈夫な歯や骨の形成に関与し、骨粗鬆症の予防に大切な栄養素です。
推奨量は、成人男性で650-800mg/日、成人女性で650mg/日とされています。
カルシウムは、乳類や魚介類に多く含まれます。
毎朝パンとともにヨーグルトを食べる、コップ一杯の牛乳を飲む、トーストにチーズをのせるなど、乳製品を毎日のパン食に2回ほど取り入れる習慣を身につけると自然とカルシウムが補えます。
魚介類では、丸ごと食べられる小魚(桜エビや干しエビ、しらすなど)にカルシウムが多く含まれています。パンとしらすを掛け合わせた和風トーストなど試してみてはどうでしょうか。
ビタミンC
ビタミンCは、コラーゲンの生成に必要な栄養素であり、美肌効果や骨粗鬆症の予防、抗がん作用に免疫力向上などさまざまな生理作用が認められています。
推奨量は成人で100mg/日とされています。
ビタミンCは、果実類や野菜、イモ類に多く含まれています。果物では、断トツでアセロラがビタミンCを多く含んでいます。他にも、オレンジやグレープフルーツなどの柑橘類、イチゴも豊富です。
果実でなくとも、アセロラジュースなどを利用するのも手です。ただ、果物やジュースは糖分も多く含むので、摂取のしすぎには注意が必要です。
ピーマンなどの野菜もビタミンCが豊富ですが、それらは水溶性ビタミンであり、茹でると溶け出してしまうので、野菜は茹でずに生で食べるのをおすすめします。
ジャガイモはデンプンに守られた熱に強いビタミンCを持つため、加熱調理をしてもビタミンCを補うことが可能です。
ジャガイモとおからパウダーを用いてポテトサラダを作れば、ビタミンCと食物繊維を同時に摂れる一石二鳥のおかずのできあがりです。
まとめ
パンだけで食事を済ませてしまっている方もいるかもしれませんが、パンだけでは補えない栄養素もあります。
大切なのは、パンと一緒に食べるおかずの選び方です。
パンといくつかの食材の組み合わせを考え、栄養バランスがよく心も体も満足できるようなパン食を心がけましょう。
参考記事
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