パンは味のバリエーションが豊富なことや、手軽に食べられること、持ち運びに便利なことなど、メリットがたくさんあり、毎日食べている方も多いと思います。
しかし一方で、パン食には多くデメリットも存在します。
今回は、パン食をもっと楽しむための「健康的な食べ方」や、パンの中でも栄養素が最も豊富な「全粒粉パン」をご紹介します。
パン食の問題点と解決策
パン食の4つのデメリット
①特定の栄養素が不足する
②高カロリーになりやすい
③咀嚼回数が下がる
④パンに含まれる添加物の摂取
私たちが食べる一般的なパン(食パンなど)では、特定の栄養素が不足してしまうことが考えられます。
また、多くのパンはパン自体に脂質を多く含み、さらにはパンと一緒に食べるおかず選びも高脂質になりがちなので、食事としてのカロリーが上がりやすいこともデメリットになります。
他にも、和食離れしてしまうことや、咀嚼回数の低下、添加物の摂取などもデメリットとしてあげられます。
これだけ、デメリットが見えてしまうとパン食はまるで悪いもののように感じてしまいますが、ご安心ください。
パンの選び方や食べ方を工夫することで、これらのデメリットを改善しつつ、パン食を楽しむことが可能です。
栄養素抜群の全粒粉パンとは
そこで、今回おすすめしたいパンが「全粒粉パン(ぜんりゅうふん)」です。
最近では、健康意識の高い方が増えたこともあり、全粒粉の食パンや全粒粉入りロールパンもよく見かけるようになりました。
パンで不足しがちな栄養素を多く含み、その独特な風味や食感を持つ全粒粉パンは、見事にパン食の欠点を補ってくれます。
なぜ栄養素が他のパンと比べて抜群に高いのでしょうか。詳しい特徴を見てみましょう。
全粒粉の特徴
その理由を探るために、まずは、全粒粉パンの原材料である全粒粉の特徴について見ていきます。
全粒粉(ぜんりゅうふん)は小麦粉の一種で、小麦についている胚乳と外皮や胚芽も除かず全てを粉にしたものです。
小麦の構造は、大きく分けて胚乳、外皮、胚芽に分けられており、一般的に料理に使われる小麦粉(薄力粉や強力粉)は、そのうちの胚乳部分のみを取り出し、粉にしています。
お米で言うところの、玄米のようなものですね。それに対し、全粒粉は、小麦についている胚乳と共に、外皮や胚芽も除かず全てを粉にしているため栄養素が高いのです。
小麦の構造はこうなっている
小麦の構造について詳しくまとめると、以下のようになります。
胚乳(小麦粉の約83%)
糖質、タンパク質が主成分であり、一般的な小麦粉に使われる。パンをふんわりと仕上げるのに大切。
外皮(小麦粉の約15%)
食物繊維が豊富で、ふすまとも言われる。
胚芽(小麦粉の約2%)
ミネラル、ビタミンなどが豊富で、健康食品に用いられる。
全粒粉パンの原材料
全粒粉パンとは、材料に全粒粉を用いたパンのことを指します。
もともと、全粒粉はグルテン量が少なく、ふっくらとしたパンが焼けないとされてきましたが、作り方を工夫することで、今では全粒粉100%のものも出回っています。
市販で売っている全粒粉パンのすべてが全粒粉100%というわけではなく、製パン性を高めるために全粒粉と強力粉を混ぜ合わせて作られているパンも多いので、全粒粉パンは配合量に着目することが大切です。
全粒粉パンの栄養素について
それでは、栄養素抜群の全粒粉パンの魅力についてお話します。
全粒粉には豊富な栄養素
前述した通り、全粒粉は小麦の外皮や胚芽部分まですべてを粉にしているので、食物繊維や、ミネラル、ビタミンなどの栄養素が豊富に含まれています。
栄養素の抜群性がどれほどなのか、今回は一般的にパン作りに利用される強力粉と全粒粉を、栄養素ごとに比較してみました。
全粒粉と強力粉の栄養素を比較
食物繊維 1食で2枚食べれば1日に必要な食物繊維の半分が摂取可能!
【強力粉2.7g、全粒粉11.2g (可食部100g中)】
食物繊維は、基本的に野菜類、キノコ類、藻類に多く含まれる栄養素ですが、全粒粉にも多く含まれていることが知られています。
なんと、その量、強力粉に比べて4倍も多いのです。さらに、食物繊維が多いことで有名なゴボウは100gあたりの食物繊維が5.7gになり、全粒粉の食物繊維は野菜のゴボウ以上でもあることがわかります。
食物繊維には、お肌をきれいにしたり、お通じの改善、ダイエット効果、血糖値のコントロールをしたりする作用があります。他にも、様々な生理作用が認められ、とても重要な栄養素になります。
目標量は「成人男性で20g/日以上」「女性18g/日以上」とされており、6枚切りの100%全粒粉食パン1枚に対して約40gの全粒粉が使われるので、1食で2枚食べるとすると、一日に必要な食物繊維の約半分がパンのみで摂れるでしょう。
カリウム 血圧降下作用やむくみ防止の期待ができる
【強力粉89㎎、全粒粉330㎎ (可食部100g中)】
全粒粉は強力粉に比べ、カリウムの量を4倍ほど多く含んでいます。
カリウムには、血圧降下作用やむくみ防止効果、筋肉機能調整効果などがあります。
基本的に動物性食品や植物性食品に多い栄養素であるので、普段の食生活から大きく不足するような栄養素ではないとされていますが、不足すると筋力低下や脱力感、食欲不振などが認められるので注意が必要です。
マグネシウム 心臓や血管の病気の予防効果が期待できる!
【強力粉23㎎、全粒粉140㎎ (可食部100g中)】
マグネシウムは主に、魚介類や藻類、精製していない穀類などに多く含まれています。よって、全粒粉にもマグネシウムが豊富に含まれており、その量は強力粉の6倍以上になります。
マグネシウムは、私たちの生命維持に欠かせない栄養素の一つで、過度な筋収縮の抑制効果や、血管の詰まり(血栓)を予防する効果を持つため、
心臓や血管にまつわる病気の予防効果があると言われています。
鉄分 貧血防止!
【強力粉0.9㎎、全粒粉3.1㎎ (可食部100g中)】
鉄分は、日本人が不足のしやすい栄養素であり、意識して摂らないと必要量を摂ることが難しいものになります。鉄分は、酸素を体中に送り届ける重要な働きを持ち、さらに貧血予防にも欠かせません。
全粒粉の鉄分は100gあたり3.1㎎であり、強力粉の3倍以上もの鉄分が含まれています。
18~29歳の女性(月経無し)での鉄分推奨量は一日6.0㎎/日であるので、100%全粒粉の食パンを一食分であれば、一日に必要な鉄分の1/3以上を摂取することができるでしょう。
亜鉛 免疫力向上!
【強力粉0.8㎎、全粒粉3.0㎎ (可食部100g中)】
亜鉛は、免疫力向上や味覚の調整など、他にも様々な生理作用を持つ栄養素です。
18以上69歳未満男性の推奨量は10㎎/日、女性の推奨量は8㎎/日であり、
全粒粉を100%使用したパンは亜鉛を豊富に含むので、一日に必要な亜鉛を摂取する手助けをしてくれます。
ビタミンB1で疲労回復を!
【強力粉0.09㎎、全粒粉0.34㎎ (可食部100g中)】
外皮や胚芽までも粉にした全粒粉は、ビタミンB群を多く含み、なかでも、ビタミンB1はとても豊富です。その量は、強力粉に比べ4倍近い数値を示していることが分かります。
ビタミンB1は、
エネルギー生産に必要であり、疲労回復に有効でもある栄養素です。頑張った体のリセットに、ビタミンB1たっぷりの全粒粉パンはもってこいですよ。
ポリフェノール(フェルラ酸)で美白美人に!
ポリフェノールであるフェルラ酸には、
メラニン抑制効果があり美白効果が期待できると言われています。
細かなフェルラ酸量は分からないのですが、小麦の外皮や胚芽部分に多くのポリフェノールが存在するため、その量は強力粉よりも全粒粉の方がとても多いと言われています。
全粒粉パンは風味良し、食べ応え良し
全粒粉パンは、外皮と胚芽ごと挽いた全粒粉を用いているので、焼成した際に香ばしい香りがします。
普通の食パンなどに比べて歯ごたえがあるので、咀嚼の回数も増え、食べ応えの感じるパンでもあります。さらに、噛めば噛むほど甘さが引き出されるため、美味しく、そして滋味あふれる味を持つことがこのパンの特徴です。
ダイエットや肥満予防にも
また、専門的な話になりますが、食品にはGI値というものがあります。
GI値は、特定の食品を食べた際の血糖値の上昇具合を指すもので、高GI値の食品ほど消化吸収が速く腹持ちが悪いことを、低GI値の食品ほど消化吸収が緩やかで血糖値が上がりにくく腹持ちが良いことを表わします。
普通の食パンのGI値が90と高いのに対し、全粒粉パンはGI値50と低く、このことからも全粒粉パンは腹持ちが良く、ダイエットや肥満防止に向くと言えるでしょう。
※GIはグライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で「GI値(じーあいち)」と読みます。
全粒粉パンでも補えない栄養素は〇〇で補う
全粒粉パンはパンの中でも栄養素が抜群に高いことが特徴です。しかし、それでも補えない栄養素はあります。
例えばカルシウムやビタミンCがあげられますが、これらは他の食品を食事の中に取り入れて補う必要があります。
カルシウムは海藻類、卵か小魚などで
カルシウムは、海藻類、卵や魚介類に多く含まれる栄養素です。全粒粉パンと共に、卵焼き、海藻類の入ったスープ等を一緒に摂る習慣をつけるなど心がけましょう。
また、骨ごと食べられる小魚にはカルシウムが多いので、しらすや桜エビなどを用いたおかずと一緒にパンを食べると良いでしょう。全粒粉パンにスクランブルエッグとシラスを乗せてトーストしたダブルカルシウムトーストなど美味しくておすすめです。カルシウムを摂取する際のポイントは、カルシウムだけでなくミネラルを含んだ食品を摂ることです。カルシウムが身体に吸収されるためには、マグネシウムやビタミンDなどが必要なのです。
よく乳製品はカルシウムを多く含んでいるので推奨されますが、実は日本人のほとんどが乳製品に含まれている乳糖に対して不耐性であり、乳製品を消化する酵素を持っていません。アメリカ人の実に70%も同じく乳糖不耐性であるというデータもあります。牛乳を飲んでお腹がゴロゴロするのはそのためです。また、牛乳、ヨーグルトはコレストロール値を急上昇させる食品でもあります。たまに嗜好品で摂取するくらいなら大丈夫ですが、日常的に摂取するのは控えた方が良い食品です。
ビタミンCは果実や野菜で
ビタミンCは、果実類や野菜に多く含まれる栄養素です。特に、果実の中では柑橘系、キウイなどの果物がビタミンCを豊富に含みます。
朝ごはんでしたら、全粒粉パントーストにフルーツサラダを添えるのが良いでしょう。
全粒粉パンのおすすめの選び方
ここまで、全粒粉パンの魅力についてお話してきました。
最後に、全粒粉パンをさらに健康的に美味しくいただくためのコツをご紹介したいと思います。
全粒粉の含有量が多いものを選ぶ
先程もお話ししたように、市販の全粒粉パンは全粒粉と強力粉が混合したものも多いので、その配合量に注意しながら選ぶことが大切です。
全粒粉パンは全粒粉の配合量が多いほど、栄養効果抜群です。できれば、全粒粉100%のものが良いでしょう。
強力粉と混ざり合っているものであれば、なるべく全粒粉の配合量のおおいものを選ぶようにしてください。
無添加のものを選ぶ
パン食のデメリットの一つとして、添加物を摂取する機会が多いことをあげました。
保存性やパンの品質を高めるために、市販で買う多くのパンには様々な添加物が使用されています。添加物は少量であれ、知らず知らずに私たちの身体に悪影響を与えている可能性があります。
毎日食べるパンでしたら、なるべく無添加のものを探し、身体にやさしいパンを選ぶと良いでしょう。
もし全粒粉の配合比率が100%のものをご希望でしたら、通販サイトなどでお探しください。全粒粉入りの食パンやベーグルなど様々な種類の全粒粉パンを選ぶことができます。
また、焼きたての無添加全粒粉パンを販売しているベーカリーも増えてきました。グーグルマップなどで、近くのベーカリーを探してみるのも良いですね。
まとめ
もし、あなたがパンが好きで、栄養豊富なパンをお探しであれば、全粒粉パンをおすすめします。
それでも補えない栄養素は、他の食材との組み合わせを考えて食事をすると良いでしょう。全粒粉パンは香ばしく、和食との相性も良いので、思い切って和のおかずと合わせてみるのも良いと思います。
毎日のように食べるパンだからこそ、選び方や、食べ方を工夫して健康的なパン食生活を送りましょう。
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