趣味でパンづくりをしている人の中には「パン屋で働いてみたい」「自分だけのパン屋を独立開業したい」と夢見ることも多いのではないでしょうか。
しかし、漠然とした想いはあっても、パン屋開業には具体的に何が必要なのかわからず、夢のまま終わってしまう人が多いかと思います。
そこで今回は、「パン屋を独立開業したい人」に向けて必要な資格や開業までの道のりをご紹介します。
「専門学校などに通い、技術や知識を身につけなければならないの?」
「パン屋の独立開業に必要な資格はあるの?」
「修行や弟子入りは必ず必要なの?」
など、このような疑問にお答えしていこうかと思います。
パンづくりの趣味と仕事の違いとは
趣味でパンを造ることが好きだからといって、誰でもすぐにパン屋になれるわけではありません。
その理由は、趣味と仕事では下記のような大きな違いがあるからです。
■家庭用と業務用機材の違い
■原価を考えなければならないという違い
■同時進行で焼いていくパンの種類と数の違い
それぞれ詳しく説明していきます。
家庭用と業務用の機材の違い
趣味と仕事のパン造りで、最も影響するのはパンを焼く機材の違いです。
オーブンだけを見ても、家庭用では電気オーブンが一般的というのに対し、業務用のものはガスオーブンで奥行きがとても長く、扉を開けても温度が下がりにくいという特徴があります。
同じ250℃で同じパンを焼いたとしても、家庭用オーブンでは12分〜13分かかるところを、業務用オーブンなら6分〜7分で焼き上がるなんてこともあります。
オーブンの他にも、捏ねるためのミキサーや発酵器も業務用になるので、趣味からいきなりパン屋を開業してしまうと機材を使いこなすことさえ、ままならないでしょう。
原価を考えなければならない経営目線の違い
家庭でパン造りをする時に、材料費は1個あたりいくらかかっているんだろうと考える人は少ないと思います。
しかしパン屋を開業するのであれば、原価計算はとても重要な要素であり、経営していくうえでは欠かせません。
こだわりの国産小麦、発酵バター、生クリームなど、材料にこだわり始めるとキリがありません。
もちろん美味しいパンを造りたい気持ちは大きいですが、こだわるほど高価な材料も出てきて、その分原価が上がり値段も高額になります。
デパ地下などには高級派のパン屋も増えてきていますが、個人経営の小さなパン屋では、高級パンが愛されるまでには時間がかかるでしょう。
こだわりの材料と原価を天秤にかけながら、バランスの良いパンを造ることが必要です。
同時進行で焼いていくパンの種類と数の違い
家庭ではたくさんのパンを焼くといっても、同時に1~2種類、数で言えば15~20個ほどだと思います。
しかしパン屋では少なくとも5種類以上、多ければ数十種類ものパンを同時進行で仕上げていかなければなりません。
常に頭を働かせながら「あとどれぐらいで発酵が終わる」「焼き上がりまであと何分」という感覚が必要になってきます。
趣味でパン造りをしていると待ち時間の方が多いようにも感じますが、仕事ではその待ち時間をいかに有効に使い、効率よく進めていくかと考えながら作業しなければなりません。
ここまで読んでいただきご理解いただけたかと思いますが、趣味と仕事でのパン造りは全く別物になると考えてよいでしょう。
パン屋を独立開業する3つの方法
では、具体的にパン屋を独立開業するにはどんな道を辿ればいいのでしょうか。
パン屋を独立開業するまでの3つの道のりを、お金、時間、体力の3点から評価してみました。
(1)パン屋に弟子入りした後、開業する
お金:★★★
時間:★☆☆
体力:★☆☆
1つ目はパン屋に弟子入りし、お店で数年の修行をした後に開業するという道です。
こちらが一番一般的な方法です。
お金を稼ぎながら開業資金を集めつつ修行ができるので、「体力に自信はあるが、お金をかけたくない」という人におすすめです。
しかし、2つのデメリットもあります。
修行に時間がかかる
パン職人になるための修行の期間は通常8~10年必要と言われています。
そんなに必要ないという考えの方もいますが、ただ美味しいパンを造れるだけではプロにはなれません。美味しいパンを毎日安定した品質で届ける必要があります。
気温、湿度、室温など様々な要因がある中で、力の入れ具合、水の量、発酵時間などを調整しながら、いつ食べても美味しいパンを造る必要があります。
加えてお店のオペレーションのこともあるので、独立して開業するとなれば8~10年の修行期間は妥当だと言えるでしょう。
きちんと教えてもらえない場合がほとんど
修行とはいえ「仕事」なので、1つ1つを丁寧に教えてくれるパン屋は少ないでしょう。
パン屋で働かせて頂きながら、技術を見よう見まねで身に付けていく必要があるのです。数十年前までは「技術が身に付くまで給料はなし」というのも当たり前の業界でした。
さすがに現在ではそんなパン屋はないと思いますが、毎日の業務に加え、専門的な知識や美味しいパンを造るための科学的な理論を学ぶために、自ら本などで学ぶ必要もあります。
仕事で疲れた身体で勉強もしなければならないので、それなりの意志の強さと体力が必要不可欠です。
(2)専門学校で学び、店で修行した後に開業
お金:★☆☆
時間:★☆☆
体力:★★★
2つ目は専門学校などで学び、その後修行または独立開業するという道です。
メリットは、パンについて丁寧に学ぶ(教えてもらう)ことができる点です。
1年程度で卒業できる学校も多いため「お金に余裕があり、丁寧にパンの知識を身に付けたい」方におすすめです。
パン屋の独立開業を諦めたときにも、大手製パンメーカーなどの就職先を紹介してもらえること嬉もしいメリットです。
しかし専門学校での学習にもいくつかデメリットがあります。
高額な学費が必要
何よりもお金がかかるということが1番のデメリットです。
例えば、東京の二子玉川にある「日本菓子専門学校」では1年間でかかる学費は168万円。
有名な鎧塚シェフ監修のカリキュラムが受けられると人気の「レコールバンタン」の1年間の学費は165万円。
お金に余裕のある方や、しっかり学んでからパン職人を目指したい方にはおすすめです。
<参考記事>
パン屋になるなら開業前に社会人向け専門学校に行くべき?期間・費用・メリットまとめ
卒業後、すぐに開業できるわけではない
高い学費を支払い、専門的な知識と技術を身につけて卒業しても、すぐにパン屋を独立開業できるわけではありません。
上述したように、パン屋を経営するためには原価を考えたり、お店のオペレーションを経験したりなど、現場でないと分からないことも多々あるのです。
お店にもよりますが、学校で知識を身に付けている分、修行の期間は短くなる可能性もあります。
(3)いきなり独立開業
お金:★★★
時間:★★★
体力:★★★
3つ目はパン屋で修行などをしないで、いきなり独立開業しようという道です。
お金も時間も体力も一番メリットがあるように見えますが、店舗を構えるのははっきり言って辞めておいた方が良いでしょう。
SNSなどを見ると、本当にプロ顔負けの腕前を持つ方も多くいらっしゃいます。
しかし上記でもご紹介したように、家庭用と業務用の機材の違いや、同時進行で焼かなければならないなどオペレーションの違いはとても大きいです。
趣味と仕事では大きな違いがありますので、修行なしでの開業はおすすめできません。
「売上を全く気にしない週末趣味開業」や「自宅スペースを使った趣味のパン屋」であれば良いかもしれません。
パン屋開業に関する資格について
パン屋で働くために絶対にこれがないと働けないという資格は、実は1つもありません。
しかし、開業となると食品衛生責任者という資格が必ず必要になります。
食品衛生責任者はパン屋のみならず、飲食店ではこの資格を持つ人がいなければ法律違反となり、営業停止になる可能性もあるのです。
資格の取り方などの詳細はこちらの記事で紹介されていますので、ご参考ください。
また、他にもパンに関する資格は国家資格から民間資格まで多数存在し、パン業界で働くうえで役立つものもありますので、いくつかご紹介します。
パン製造技能士
パン製造技能士は2級、1級、特級と分かれており、全て国家資格です。
国家資格とだけあり、受験資格も指定の学校を卒業するか、2年以上の実務経験が必要となり、ハードルが高めですがそれだけの信頼性があります。
この資格がなければできない仕事などはありませんが、パン屋を開業する際にパン製造技能士を示すことでお店の実力をアピールする1つの手段にも。
ただ、取得に時間のかかる資格のため目標の1つとして考えるのがいいかもしれないですね。
パンシェルジュ検定
パンシェルジュ検定はパンシェルジュ検定運営委員会主催の民間資格です。
パンシェルジュとは「奥深いパンの世界を迷うことなく案内できる幅広い知識を持った人」という意味で、パン造りに関する知識だけでなく、フランスパンを最も美味しく食べられるのは焼き上がりから何時間後か、一次発酵の温度と湿度はいくつなど、パンに関する様々な知識を得ることができます。
私は実際にパンシェルジュ検定3級を取得しましたが、世界中の知らないパンの種類や奥深い酵母の話など、パン好きとしてはタメになる情報ばかりでした。
3級では4択の中から正解を選ぶ方式の筆記試験、2級になると「ライ麦パンを美味しく食べる方法」などのテーマで作文を書く試験などもあります。
パンが好きな方には勉強も面白いと思いますので、挑戦してみるのもいいのではないでしょうか。
パンコーディネーター
パンコーディネーターとは「食べる視点」から適切な助言や提案を行うプロフェッショナルになるための資格です。
3段階に資格の等級が分かれており、アドバンス、プロフェッショナルと等級が上がっていきます。
そして上位資格を取得するには、下位の資格を取得していることが条件となります。
パンコーディネーターの資格があればサンドイッチなどの新商品開発にも大いに役立ち、仕事以外にも自らもパンを食べることが楽しくなるような豊富な知識を得ることができ、一石二鳥ですね。
パン屋開業後もより上位の資格を目指していくのもいいのではないでしょうか。
まとめ
今回はパン屋独立開業までの3つの方法と、パンの勉強におすすめの資格をご紹介しました。
それぞれの事情に合わせた方法をご紹介しましたが、修行なしの開業はやはりおすすめはできません。
しかし、なるべくお金も時間もかけずに、失敗リスクを抑えてパン屋の開業を実現させたいと考える方も多いと思います。
そこでご紹介したいのが、当社のパン屋の開業支援「リエゾンプロジェクト」です。
・たった5日間の研修で製パン技術が身に付く
・独自のミニ機材を使ってコストを抑える
・創業35年パン屋開業の成功ノウハウを学べる
などが特徴です。
ご興味のある方はリエゾンプロジェクト無料説明会に、是非ご参加ください。
下記の記事も参考になると思いますので、併せてご確認いただければ幸いです。
<参考>
パン屋を開業・独立したい人は必見!絶対に知っておきたい情報まとめ