米粉で作る米粉パンは小麦粉を使わないグルテンフリーが魅力のパン。ダイエットや小麦アレルギー対策として人気を集めています。
しかし一方で米粉パンの製造には「コンタミネーションなどのリスク」もあるため、製造する際にはいくつかの注意点を抑えておくことが大切。
そこで今回はグルテンフリーのメリットやダイエット効果について触れながら、米粉パンの魅力について解説していきます。
グルテンフリーとは
グルテンとは小麦粉に含まれるタンパク質のことです。粘り気があり、食品に入れることでモチモチとした食感やコシを与える効果があります。
しかし一方で肥満や不調の原因ともなるデメリットも併せ持ち、今グルテンを避ける食事療法“グルテンフリーダイエット”は世界中で流行しています。
では、グルテンフリーのメリットにはどんなものが挙げられるでしょうか。グルテンフリーの国内基準に触れながら、グルテンフリーの特徴とそのダイエット効果について紹介していきます。
グルテンフリーの国内基準
海外におけるグルテンフリーの表示基準
海外で食品に関する表示基準を定めるのは、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で運営する国際食品規格委員会(CAC)。
一般的にはコーデックス委員会と呼ばれています。コーデックス委員会が定めるグルテンフリー表示が可能なグルテンの含有量は20ppm以下。現在この国際基準にはEUをはじめ、アメリカやカナダ、イギリスが従っています。
海外と異なる国内の表示基準
一方国内にはグルテンの含有量に特化した表示基準はなく、代わりに「アレルギー表示」が用いられます。「食品表示基準」で指定されている小麦の表示基準は、10ppm以上。海外のグルテン表示義務よりもより厳しい基準であることが分かります。
また平成29年には農林水産省が米粉製品の販売拡大を目的に「米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン」を策定。米粉のグルテン含有量1ppm以下の場合はノングルテンとしての表示もできることとなりました。
小麦アレルギーに対応したグルテンフリー
本来グルテンフリーは、小麦アレルギーやグルテン不耐症の人のために考案された食事療法。他にも“セリアック病”患者への対処・治療として用いられています。
セリアック病はグルテンで中毒反応が起こり生まれた抗体が、小腸粘膜に損傷をもたらしてしまう自己免疫疾患。時には命に関わる損傷が起こるリスクもあるため、患者は生涯にわたりグルテンの摂取を避けなくてはなりません。
生活環境や食生活が変化した今、小麦アレルギーの患者数は増加傾向にあります。グルテンフリー食品へのニーズは年々高まりつつあり、米粉パン商品もあちこちで見かけられるようになりました。
近年では小麦アレルギーの自覚は無くても、過敏性腸症候群など遅延性のアレルギーであるケースも急増。強いアレルギー反応は起こさずとも「小麦を食べるとなんとなく調子がすぐれない」という人が増えています。
パンにパスタ、揚げ物にケーキと慢性的に小麦を摂ることができる現在では、グルテンフリーで身体の調子を整えるという人も多いようです。
グルテンフリーのダイエット効果
世界中で流行しているグルテンフリーダイエットですが、その効果は一体どれくらいあるのか気になる方も多いはず。グルテンフリーがダイエットに最適な理由には、大きく分けて以下の二点があります。
①エクソルフィンの食欲増進作用を抑える
②血糖値の上昇を抑えて身体に脂肪を溜め込むことを防ぐ
エクソルフィンはグルテンに含まれる成分で高揚感や中毒性をもたらします。その結果食べ過ぎに繋がって、太りやすい身体を形成してしまうのです。
さらにグルテンには血糖値を上昇させる働きも。血糖値が急激に上がると糖分を脂肪に変えて溜め込んでしまうため、エクソルフィンの働きと相まって急激な体重増加に陥るリスクもあります。
グルテンフリーダイエットをすることで、この二つのデメリットが回避できる上、ダイエットをしながら痩せやすい身体を作ることができます。
グルテンフリーを実現させた米粉パン
グルテンフリーでまず避けなくてはいけないのが、小麦を大量に使ったパン製品です。しかし米粉のみの製パンなら、モチモチ感を保ちながら小麦を一切使用しないパン作りが可能。米粉パンはグルテンフリーを続ける人々の間で幅広い支持を得ています。
米粉パンとは
【米粉パンに使われる米粉】
米粉パンは小麦粉などのムギ類を使用せず、米粉を利用して作られたパンのこと。米粉100%のものと、原料を米粉として小麦グルテンを添加したものがあります。
米粉の種類は「白玉粉」や「上新粉」などいくつかに分かれており、米粉パンに使う米粉には最新技術でうるち米を細かく粉砕したものが使われています。味も小麦粉を使ったパンとほとんど変わらず、もっちりとした食感や自然な甘みが特徴。小麦粉のパンよりも美味しいという人もいます。
【米粉パンのメリット】
グルテンフリー
米粉パンの一番のメリットはもちろん、小麦粉なしのグルテンフリーであること。従来パンを膨らますためには小麦グルテンの力が必要不可欠とされてきましたが、2001年に山形大学工学部の研究グループが米粉100%の製パン開発に成功。以降、学校給食への導入や大手コンビニエンスストアによる全国展開など米粉パンの利用が広がっています。
参照:農研「グルテン不使用の100%米粉パンの製造技術を開発しました」
参照:農林水産省「米粉パンとごはんで地産地消の学校給食」
①腹持ちがいい
米粉パンは小麦粉パンよりも水分含量が高いため、腹持ちがいいといわれています。またモチモチとした食感で何度も咀嚼する必要があり満腹感を得られる効果も。ダイエット中であれば間食やよけいな食事をセーブすることができます。
②栄養価が高い
小麦粉に比べて米粉は栄養素も豊富。炭水化物のほかにもたんぱく質、脂肪、ビタミンなどを含んでいます。また、タンパク質の栄養価の指標となるアミノ酸スコアの数値も小麦粉より上。米粉パンは栄養価の麺でも良質な食品といえます。
③米の消費不足を助ける
現在国内では、食生活の欧米化が進みコメの消費量は年々減少を続けています。しかし小麦粉の代わりとなる米粉であれば、パンやパスタ、揚げ物やお菓子とさまざまな料理に活用することが可能。コメ離れを改善するきっかけとなるかもしれません。実際に農林水産省は米粉の国内外での普及を推進しており、ホームページ内で米粉を使ったレシピ動画なども掲載しています。
米粉パンにおける注意
米粉パンであっても100%安全であるとは限りません。小麦アレルギーの人が米粉パンを選ぶときには以下の二点に注意することが大切です。
・米粉使用と記載されていても、米粉+小麦粉で作っている
米粉使用という表記があっても米粉100%の米粉パンとは限りません。原料で米粉を使いつつ、ふくらますために少量のグルテンを使用するケースもありますので、100%の表記が無い限りは小麦粉が入っている可能性も視野に入れておきましょう。
・小麦粉パンを作る時と同じ調理器具を使っている、製造ラインが分けられていない
重度の小麦アレルギーの場合は、空気中に舞った小麦だけでも激しく反応してしまうことがあります。よって米粉パンを作る際には、それ専用の調理器具と製造ラインを整えることが重要です。しかし専門工場などを持たないパン屋さんの場合は製造する場所が一緒になることで、空気中に舞ったり調理器具に付いたりしていた微量の小麦が米粉パンに混入してしまう可能性があります。
この問題は“コンタミネーション”と呼ばれる、アレルギー問題における注意点の一つ。次の章では、このコンタミネーションの発生理由と回避するポイントについて紹介していきます。
米粉パンに潜むコンタミネーションに注意!
米粉パンで最も気を付けたいのが、このコンタミネーション。コンタミネーションは製造時には気が付かないほどの小さな混入のことで、意図せずアレルギー症状を引き起こしてしまう危険性のある重大な問題です。
徹底した対策を行っても発生してしまう問題のため、食品メーカーなどは注意喚起表示をすることで対策としています。
コンタミネーションの内容と発生理由について見ていきましょう。
コンタミネーションとは
そもそもコンタミネーションとは、食品を製造する際に原材料として使用していないにもかかわらず、特定原材料等のアレルギー物質が混入してしまう場合を指します。
この混入はごく微量で、製造側からは目で確認することができないほどです。しかしアレルギー患者からすると命に関わる危険性もあるため、コンタミネーションの徹底的な排除は食品の製造ラインにおいて欠かせません。
現在行われているアレルギー表示制度ではコンタミネーションについての表示義務はありませんが、厚生労働省はこの対応として一括表示枠外に「注意喚起表示」をすることを推奨しています。ただしアレルギー患者が食品選択時に不安をあおる可能性があるため「可能性表示」については認められていません。二つを混同しないように注意が必要です。
注意喚起表示の例
「本品製造工場では小麦を含む製品を生産しています。」
「小麦を使用した設備で製造しています。」
「本製品で使用しているシラスは、かにが混ざる漁法で採取しています。」
「本製品で使用しているイトヨリダイは、エビを食べています。」
可能性表示の例
「本品には小麦が入っている場合があります。」
「本製品で使用しているイトヨリダイは、エビを食べている可能性があります。」
参照:日本健康・栄養食品協会「アレルギー物質を含む食品に関する表示Q&A」
コンタミネーションが発生する理由
コンタミネーションの発生理由は大きく分けて以下の2種類。それぞれ混入するタイミングや理由が異なります。
【製造ラインで起こるコンタミネーション】
製造の過程で混入する可能性のあるコンタミネーションのことです。製造ラインや調理器具に付着した特定のアレルギー物質が落とし切れていないまま他の製品を続けて生産することで混入が起こります。
また小麦粉などの粉末類は、製造過程で飛散してしまうために同じ製造ラインではない製品であっても混入してしまうことが考えられます。
【原材料に含まれるコンタミネーション】
これは原材料そのものに混入しているケースです。例えばエビやカニはその小ささから、水産物の原料となる魚に捕食されていたり付着したりしている可能性があります。ほかにもエビやカニが混ざる漁法で採取されるシラスなども混入の危険性があり、注意が必要です。
小麦の場合は、収穫後に貯蔵タンクや輸送設備を通る過程で大麦に混入する恐れがあります。
コンタミネーションを防ぐには、
・専用の調理器具を使用する
・製造ラインを十分洗浄した上で、次の製造に移る
・調理場所や調理時間帯を分ける
といった方法が挙げられます。
同じ厨房でパンを製造する場合、厳密にはアレルギーの危険があるのでコンタミネーションの可能性は捨てきれません。個人経営の場合は、小麦パンと米粉パンで全く異なる製造ラインを作ることは難しいため、どちらか一択にしぼって生産する方が賢明です。
まとめ
アレルギー対応として人気の米粉パンですが、スペースの少ない個人経営の店だとコンタミネーションの可能性は捨てきれず、小麦パンと米粉パンの両方で対応するのは難しいといえます。当社ではこれまで米粉パンの試作を何回も繰り返してきたものの、心から美味しくてリピート購入いただけそうなパンは未だに造れていません。
健康によくても、味が美味しくないとビジネスとしての継続は難しいもの。米粉パンは自宅でのパン作りなど、趣味ベースで楽しむのがおすすめです。
参考記事
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