2020.06.04

パン屋の廃業率とその要因|飲食業界やフランチャイズ店舗との比較

脱サラからのパン屋開業は、昔からイメージされる憧れのビジネスモデル。日本人の食文化はここ数年で変化し、パン食の人気も上昇したため「個人でパン屋を開業したい」という人も年々増えてきています。

しかしそれに反してパン屋の廃業率は増加傾向に。単に経営を失敗しただけでなく、様々な要因で廃業が加速しています。

今回は2019年に激増したパン屋の倒産件数をもとに、飲食店や喫茶店と比較しながらその実態を探っていきます。またフランチャイズ店舗と個人事業による廃業率の違いについても、そのビジネスシステムの違いから解説します。

パン屋、飲食店、喫茶店それぞれの廃業要因をチェックして、

・消費者ニーズの変化
・地域密着型店舗のデメリット
・売り上げを伸ばしているパン屋の特徴

などパン屋を長期的に存続させるためのポイントを見ていきましょう。

パン屋の経営を失敗、廃業させないための「具体的な情報」がほしい方は、こちらの記事をご参考ください。

パン屋の廃業率と他業界との比較

高級パンのブームやパンをテーマにしたフードフェスの開催など、ここ数年で日本人のパンに対する関心は上昇傾向にあります。

総務省が発表する「家計調査」では世帯当たりのパン購入価格も年々上昇しており、平日休日での支出額も比例して増加。パンは日本の食卓に欠かせない存在となりました。

しかし一方でパン屋の廃業率はここ一年で急激に悪化。その対象は低価格での薄利多売型を採用する個人営業のパン屋から、店舗を複数展開する法人営業のパン屋までビジネスモデルを問いません。

この傾向はパン屋業界だけにとどまらず、飲食店喫茶店でも起こっています。

急変しつつあるパン製造小売業の現状をについて飲食店や喫茶店のデータと比較しながら探っていきましょう。

パン屋の廃業率の推移

パン食の人気が高まりつつある昨今で、パン屋の廃業率が急増していることが判明した調査結果は大きな話題となりました。なかには昭和から続いた老舗ベーカリーなどもあり、パン製造小売業を存続する難しさを物語っています。

急増するパン屋の倒産件数

出典:帝国データバンク

2019年のパン製造小売業者の倒産件数は、過去最多の31件を記録。これまで10件台で推移していた2011年から2018年までの記録を大きく更新する結果となりました。

負債総額は2019年時点で18億200万円にも上り、前年記録した6億200万円を倍以上に上回っています。

地域密着型モデルの倒産

出典:帝国データバンク

倒産した31件の内11社は、業歴30年以上を誇る老舗ベーカリー。さらに地域別に見ると19件が近畿地方となっており、地方での倒産ケースが多いのも特徴です。

このような経営モデルでは家族経営がベースとなっている場合がほとんどで、「後継者問題」や「コンビニエンスストアの増加」が倒産理由として挙げられます。

負債規模では「1000万~5000万円未満」の小規模倒産が22件と最多。これは全体の7割以上にあたり、地域密着型の個人事業者が多いためと考えられます。

法人営業でのパン屋も破産傾向に

特に注目されたのが、約5億3100万円の負債額でトップとなった “コペンハーゲスト”。大阪・兵庫エリアを中心に約18店舗展開してきた手作りパンのお店です。

独自製法のオリジナルパンが人気を博し、一時は百貨店での販売なども行っていたほどの有名店でしたが「原材料価格の高騰」や「出店や設備投資の資金不足」を原因に年々経営が難航化。2019年に倒産する流れとなりました。

また、昭和55年創業の老舗ベーカリー“イッツピーターパン”も東京を中心に複数店舗を構える人気店でしたが、約2億円の負債を抱えて倒産。

100円台からのパンも取り揃えるコストパフォーマンスの高さが魅力のパン屋でしたが、「コンビニエンスストアの台頭」や「原材料価格の高騰」が原因と見られています。

コンビニエンスストアのほかパン屋を開業する同業他社も増えており、パン食の人気に比例して競争が激化していることも廃業率が高まる一因です。

参考:帝国データバンク「パン製造小売業者の倒産動向調査(2019年)」


【POINT】
当社では「パン屋に来店する顧客」と「コンビニエンスストアでパンを購入する顧客」とは顧客属性が異なるため、『コンビニは競合ではない』と考えておりますが、一般的な意見としては競合として考えられています。

 

廃業率の低いフランチャイズ店舗

一方でフランチャイズ店舗となると、廃業率はやや異なる結果が見られています。

独立起業者全般として事業を開始した場合の5年後廃業・撤退率は80%以上ともいわれています。個人事業で5年以上存続することは意外と簡単ではありません。

しかしフランチャイズ加盟の場合、この廃業・撤退率は35%。五年後の存続率は65%まで上がることが分かっています。

フランチャイズ店舗の場合は下記のようなメリットがあります。

・加盟企業の商標や名称の利用
・出店資金の節約
・確立した経営マニュアルの提供
・SV(スーパーバイザー)による指導

フランチャイズ本部に、経営に失敗しないための情報が多数蓄積されていることがポイントです。

一方で個人で独立開業する場合には、フランチャイズ店舗よりも自由がきく分、経営者自身が全ての経営システムを自己責任で決めなくてはなりません。

特に開業初期段階で経営者にかかる負担が少ない点もフランチャイズ店舗が人気を集める大きなメリットですが、自由度が少ない、規約が多いなどのデメリットもあります。

参照:日本フランチャイズチェーン協会「統計データ」

【POINT】
パン屋を開業する方法は、①他店舗で修業をした後に独立開業 ②フランチャイズ契約を結びFC開業 ③独立開業のサポートを行う開業支援 の大きく3つに分かれています。当社では「③開業支援」でオーナー様のご希望を叶えるパン屋の開業ご支援をしております。

 

飲食店や喫茶店との比較

パン屋の廃業率が急増する中、飲食店や喫茶店も同様の展開を見せています。

2019年10月に消費税が引き上げられ軽減税率が導入されたことも、低迷する外食産業を脅かす要因となりました。ほかにも、

・コンビニエンスストアの台頭
・消費者嗜好の多様化
・人材不足

など個人営業による問題は多く、飲食店喫茶店ともに2019年は前年を上回る倒産件数をマークしています。

飲食店の倒産件数も過去2番目の多さに

出典:東京商工リサーチ

パン屋と同様に飲食店の倒産も、2019年に過去最多となる799件を更新。前年の653件を大きく上回る結果となりました。

バブル末期となる1990年以降の30年間と比較してみると、トップは東日本大震災が発生した2011年の800件。2019年の799件はこれに次いで2番目の多さとなっています。

飲食業の内訳では、「食堂、レストラン」が227件と過去30年で最多に。続いて「専門料理店」が192件、「喫茶店」が63件、「持ち帰り飲食サービス業」が24件となり、いずれも前年より増加する結果となりました。

飲食店で挙げられる倒産理由は、

・消費者の節約志向の高まり
・テイクアウトやデリバリーなど中食ニーズの増加
・競合他社との競争の激化
・人手不足
・後継者問題

などさまざま。いずれにしても「消費者のニーズ変化」や「競合他社の増加」が原因と見られます。

小規模経営の倒産が顕著

従業員数別の最多は5人未満の703件。5人以上10人未満の件数は55件となるため、10人未満の件数は758件にも上り、これは全体の9割以上を占めています。

負債額でも1億円未満の件数は、9割以上の725件。5千万円未満の小規模経営での倒産件数を見てみると、658件と8割以上を占めていることが分かります。

飲食店でも少人数体制による小規模経営での倒産は増えているようです。一方で1億円以上の件数は74件。全体の1割程度となりますが、多店舗展開で失敗する飲食店があることも特徴的です。

個人経営の多い喫茶店にも打撃

2019年に倒産した飲食店799件の内、63件となったのが「喫茶店」。喫茶店の年間倒産は、全体での倒産件数が最も高かった2011年の70件を最多に、60件を下回ったまま一進一退のペースで進んでいました。

しかし2019年には競合他社との顧客争奪戦が激化、消費者ニーズの多様化も相まって、倒産する店舗が目立つようになります。

倒産した喫茶店の負債額を見てみると、5千万円未満が全体の9割近くを占めていることも特徴です。

個人経営のビジネスモデルが多い喫茶店では大手コーヒーチェーンやコンビニエンスストアとの競争に耐え切れず、破産してしまうケースがほとんど。

パン屋の廃業要因と同じように、「コンビニエンスストアの増加」も倒産を後押しする原因となっています。

参考:東京商工リサーチ「2019年『飲食業倒産動向』調査」

当社プロジェクトとの廃業率比較

飲食店の3年後廃業率となると約7割、10年後にはわずか1割程度と言われています。喫茶店単体での廃業率は明示されていませんが、飲食店と同様10年間の存続を目指すのはかなり厳しいのが現状です。

フランチャイズ店舗は5年後廃業率が35%と個人事業よりも高い結果となりましたが、それでも約3店舗につき2店舗が廃業していることが分かります。

一方個人でのパン屋開業を手助けするリエゾンプロジェクトの廃業率は、11年で15%程度。8割以上の店舗が10年以上も経営を続けられているという結果が出ています。

その理由としてはパン造りだけでなく、

・パン屋の開業に適した立地選定
・未経験でも美味しいパンが焼ける5日間製パン研修
・様々なパン屋経営の成功ノウハウ
・開業後のフォローアップや勉強会

などをサポートしていることが挙げられます。

また、ご契約に進む前に「製パン研修のみ受講可能」のため、パン屋の経営に進む前に適性を確認できることも特徴です。

詳しくは「リエゾプロジェクト詳細ページ」をご確認ください。

パン屋が廃業に追い込まれてしまう4つの要因

パン屋の経営に失敗したり廃業に至るまでには、周囲の環境や人材不足の課題、根本的なビジネスシステムの欠点などいくつかの要因が複合的に絡み合っています。

基本的にはどれか一つで倒産までに追い込まれるというよりも、どれか一つが疎かになった結果、徐々に運営状況が悪化していくことがほとんどです。それぞれ分解して考えてみましょう。

パン屋が廃業する4つの大きな要因

パン屋が廃業する要因は大きく分けて以下の4点。

①高齢化による後継ぎ問題
②コンビニなど競合他社の増加
③採算の悪化
④薄利多売のビジネスシステム

それぞれの特徴と回避するためのポイントについて見ていきます。

①高齢化による後継ぎ問題

後継者探しに時間をかけられない

商店街にある町のパン屋、地方での家族経営パン屋などで起こりやすいケースがこの「後継ぎ問題」です。

特に個人でパン屋を経営する場合、フランチャイズ店舗とは違い、経営指針や運営マニュアルを示してくれるものがありません。

そのため、パン製造から陳列、広告や集客までを全て経営者ご自身で行う必要があります。

するとパン屋として働くこと自体がかなりの重労働となるため、後継者を探す時間をかけられず、いつの間にか困難な状況に陥ってしまいます。

家族経営の場合には、経営者の高齢化により止む無く閉店するケースも少なくありません。

製パン技術の習得に時間がかかる

製パン技術を習得するまでに長年の修行が必要なことも、後継ぎが見つかりにくい要因です。

どんな気候でも、毎日安定して美味しいパンを造るためには、一般的に約8~10年のパン修行期間が必要とされています。

変化のスピードが速く、働き方も多様になった今の時代には「パン修行」そのものが受け入れられなくなっているようにも感じます。

そもそも働き手がいない

地方でパン屋を経営する場合には、家族以外に働き手を見つけにくいのもデメリットの一つです。

長期的な経営を目指すのであれば、早い段階から人材育成に力を入れることも、後継ぎ問題による倒産を回避するために有効な手立てとなります。

【POINT】
当社では未経験者でも「修行なし」で美味しいパンが焼ける「5日間の製パン研修」を行っています。ご興味がある方はこちらのページをご確認ください。ご契約前に「研修のみ受講」も可能です。

②コンビニエンスストアなど競合他社の増加

飲食店や喫茶店と同様に影響が大きいのが、コンビニエンスストアなど競合他社の台頭です。

最近ではカフェやパン屋のニーズも取り込んだ商品も多く登場しており、専門店が顧客を獲得することはより難しくなってきています。

さらに近年では「時短」へのニーズが急激に上昇し、1店舗で複数の商品を揃えられるコンビニエンスストアの価値がますます上昇。パンのみを専門的に売り出すパン屋から消費者の足が遠のく原因となっています。

しかしこの専門性を逆手にとって人気を集めるのが、高級路線の食パンやオリジナル性の高い創作パンを売り出すパン屋です。

そもそもパン食に対する消費者のニーズや購入価格は上昇傾向にあり、低価格であることよりもオリジナルであることが重視されようになってきています。

これからのパン屋開業においては「どのようにオリジナリティーを打ち出していくか」が鍵となりそうです。

※先述したように、当社では「パン屋とコンビニの顧客属性は違う」と考えているため、上記はあくまで一般的な考えとなります。

③採算の悪化

個人経営の場合、大きな課題となるのが「安定した収益性の確保」になります。採算が悪化する要因については、人件費や原材料費の高騰、そして固定費負担の増加などさまざま。

人手不足が激しい上に人件費が高騰しアルバイトなどを雇えないというケースや、原材料費の高騰による商品の値上げで客足が遠のいてしまうケースなどが挙げられます。

特に地元密着型の場合は顧客との信頼関係が強く、なかなか値上げに踏み切れないというケースもあるようです。

コストの変化については予測できる範囲が限られているため、あらかじめ多様な事態を想定して経営を進める経営手腕が求められます。

「パン屋の開業ノウハウ」を知らずにパン屋をオープンさせてしまうと、思うように売上が上がらず、採算が悪化してしまう可能性が高いです。

④薄利多売のビジネスシステム

飲食店や喫茶店と比べて著しいのが、パン屋特有の薄利多売のビジネスシステムです。

パンの価格設定は原材料を軸に決定されるものですが、裏を返せばコストが少なくて済むほど価格を抑えることが可能になります。

そのためパン屋では1個100円台からなる低価格をウリにする店舗も少なくなく、自転車操業の経営を行っている所も多くあります。

しかし、薄利多売のビジネスモデルと言われる一方で、実はパン屋は「利益率」は高い商売でもあります。

そして不景気や2020年の新型コロナウイルスによる自粛要請の状況でも、売上が上がっている店舗が多くあります。

つまり、売れるパン屋になるためのマーケティング手法を学べば、利益をしっかり出すことが可能なのです。

逆に言えば、パン屋で成功するためののノウハウを知らないままに開業に踏み切るのは大変危険な考えだと言えます。

まとめ

パン屋経営は一見伸び伸びとした気風が感じられるビジネスですが、競争も激化し個人事業主としてのリスクも大きくなり始めています。

パン屋の開業や経営を成功するためには、現在のパン屋の廃業率の高さとその要因を知り、徹底した対策を取ることがポイントです。

リエゾンプロジェクトは「5日間研修」や「廃業率の低さ」が魅力のパン屋の開業支援プロジェクト。

パン屋開業を目指す方は、フランチャイズでもなく独立開業とも違う「パン屋開業支援 リエゾンプロジェクト」をぜひ参考にしてみてください。

参考記事

>不景気やコロナ禍でも成功するパン屋を開業するために

>コロナ禍でも売上が増加するパン屋の秘密|コロナ対策店舗へ改装した背景

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